化学だいすきクラブ

元素ファミリー 循環する元素

元素ファミリー 循環する元素

地球上の全ての元素は,増えることも減ることもなく姿を変えて循環しています。その一端を見ていきましょう。

この記事を書いた人: 渡部智博
立教新座中学校・高等学校

炭素

炭素Cの循環に着目する。

地球が誕生した約46億年前,大地は活発な火山活動をし,大気は,二酸化炭素CO2などで満たされていた。ジルコンZrSiO4写真1)という鉱物を分析し,40億年以上前に二酸化炭素や水H2Oが存在したことがわかっている。

地球が少しずつ冷えてくると雨が降った。二酸化炭素,二酸化硫黄SO2,そして塩化水素HClなどの火山ガスや,カルシウムCaなどを含んだ鉱物を溶かした水が,陸から海に流れた。海では,これらが反応して炭酸カルシウムCaCO3を主成分とする石灰岩(写真2)などが生成した。

藻類などは光合成をして水と二酸化炭素からグルコースC6H12O6などの有機物や酸素O2を作った。古生代の石炭期には森林が発達したが,樹木を分解する微生物がいなかったため,樹木が分解されず炭素Cを主成分とする石炭(写真3)となり,大気中の二酸化炭素が減少したと考えられている。このような過程を経て,二酸化炭素は3億年前頃には今とほぼ同じくらいの濃度に低下した。現在では,植物などが枯れると,微生物の働きで有機物は空気中の酸素と反応して二酸化炭素と水にもどる。また,海底に堆積した石灰岩や有機物は,海洋プレートで大陸の下に沈み込み,熱で分解されて二酸化炭素となり,火山活動で再び大気中に放出される。今では,炭酸塩の沈澱には生物が関係していることが多い。例えば,南西諸島の砂浜に見られる星の砂は有孔虫の殻(写真4)であり,サンゴ礁(写真5)も炭酸カルシウムでできている。

このように,炭素Cはいろいろな物質(二酸化炭素,石灰岩,有機物,石炭)に変化するが,炭素そのものが増えたり減ったりしているわけではない(図1)。元素は循環しているのである。

写真 1
写真 1: 二酸化炭素や水などが含まれているジルコン 提供,山本伸次准教授(横浜国立大学)
写真 2
写真 2: 石灰岩
写真 3
写真 3: 石炭
写真 4
写真 4: 星の砂(有孔虫の殻)
写真 5
写真 5: サンゴ礁
図 1
図 1: 炭素循環

化学だいすきクラブニュースレター第53号(2023年4月1日発行)より編集/転載

先頭に戻る