化学だいすきクラブ

活躍する化学 SDGsと化学 ~化学の力で世界に貢献~

活躍する化学 SDGsと化学 ~化学の力で世界に貢献~
この記事を書いた人: 石塚友貴
葛飾区立桜道中学校

SDGsって?

みなさんは,SDGsを知っていますか? SDGsとは,Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)といって,世界の国々が2016年から2030年の15年間でよりよい世界にするために達成するべき17個の項目のことです。これらの項目に対して,化学も貢献しています。では,どのような貢献がされているのでしょうか。

SDGsに貢献する化学

SDGsの17個の項目に対する代表的な化学の貢献は以下の通り(表)です。

日本の化学系企業では,植物工場(光源に太陽ではなくLEDライト,土の代わりに培養液を使って農作物を季節に関係なく年中生産する施設)で2.に,生分解性プラスチック(生物資源から作られるプラスチックであるため,石油由来の従来のプラスチックよりも環境負荷が少ない)で12.に貢献していることなどが挙げられます。また,ここ数年で広まっているスマート家電やスマートハウスといったものもSDGsに貢献しています。

そして今回みなさんに紹介するのは,東京大学生産技術研究所の酒井雄也准教授らの研究です。酒井准教授らは2021年5月末に,野菜や果物などの廃棄食材を乾燥後に粉砕し,適量の水を加えて熱圧縮成形することで,建築材料としても十分な強度をもつ素材の開発に成功したことを発表されました。一般的なコンクリートの強度は5 MPa※1であるのに対して,オレンジやバナナ,キャベツ,ブロッコリーなどで10 MPa,白菜では18 MPaにまで達したそうです。これほどの圧力に耐えられる強度になる原因は今のところ不明ということですが,食材に含まれる糖類に秘密が隠されているのではないかと考えられています。この研究が実用化されれば,SDGsの17項目において,「耐久力の高い建築素材の開発」,「リサイクル素材での製品化」という点で,11.,12.の2項目に貢献することができます。また,建築材のもととなった食材がもつ香りや色,味の調整も可能ということです。実際に白菜やオレンジなどでは,食塩や砂糖,コンソメパウダーを加えて味を良くすることにも成功しています。つまり,建築材を非常食にすることや食品の使い捨て容器の材料に使えば,容器ごと食べることができるため,備蓄としても廃棄物の減少にも貢献することができるのです。

※1 MPa(メガパスカル)… Pa(パスカル)は圧力の単位。メガは1000000倍を表す。

このように,廃棄食材が建築材に変わるという私たちの想像を超えるようなことを実現できるのも化学の力です。みなさんもSDGsに貢献しながら,化学がどのように利用されているのか考えると面白い発見ができるのではないでしょうか。

参考
2021.05.25【記者発表】廃棄食材から完全植物性の新素材開発に成功

※リンク先はいずれも2022年10月現在

表
表: SDGsの17個の項目に対する代表的な化学の貢献
写真1
写真1: 上段:キャベツの葉、いよかんの皮、玉ねぎの皮/中段:食材を粉砕したもの/下段:完成した素材(東京大学酒井雄也准教授提供)

化学だいすきクラブニュースレター第50号(2022年4月1日発行)より編集/転載

先頭に戻る