活躍する化学 おばあちゃんは偉大な化学者?!
みなさんは昔から広く伝わる教えを,今までにいくつか聞いたことがあるのではないでしょうか。例えば「料理に使う調味料は『さしすせそ』の順に入れる」とか「砂糖を入れるとふんわりした卵焼きができる」,「冬に玄関先や道路が凍結したら塩をまく」というものです。昔の人の日常の実体験から語り継がれているものでしょうが,ここにも「化学が活躍」しているのです。
料理に使う調味料は『さしすせそ』の順に入れる
まず砂糖と塩の順番について。これは分子の大きさが関係しています。砂糖(ショ糖)の分子は,食塩(食塩を構成するナトリウムイオンや塩化物イオン)の6倍も大きいので,小さい食塩を先に入れてしまうと,味付けをしたい食物に大きい分子の砂糖が入らなくなってしまうので,砂糖を先に入れます。
酢は酸味を残すために後半に入れます。醤油(せうゆ)や味噌(みそ)は,発酵食品ならではの「香り」を活かすために,加熱時間が短いほうが良いので最後に入れます。
砂糖を入れるとふんわりした卵焼きができる
卵の成分は水の他はほとんどがタンパク質です。タンパク質は加熱により固まりやすい性質があります。砂糖には,この性質を変化させる力があります。これは,タンパク質の一部に砂糖の分子がはたらきかけ,卵が固まるのを妨害するからです。卵が固まりにくくなることで,ふんわりとしたより柔らかな卵焼きが出来上がるのです。
冬に玄関先や道路が凍結したら塩をまく
液体が凍り始める温度を凝固点といい,みなさんも知っているとおり,水は通常は0 ℃で氷になります。でも塩水は0℃では凍りません。しかも塩水の濃度が高くなればなるほど凝固点は低くなり,飽和溶液では-21.3 ℃まで凍りません。
では,凍っている道路に塩をまくと・・・。塩と接している部分の凝固点が下がっていきます。そして凝固点が外気の温度以下になったとき(外気が-3℃なら,-3 ℃以下になったとき),表面の氷が融け始めます。こうして道路の氷は融けていくのです。
「おばあちゃんの知恵袋」などと言われている「生活の知恵」には,まだまだたくさん「化学が活躍」しています。
みなさんの身のまわりにも,たくさんあると思いますよ。
おうちの人にも聞いてみましょう。
※ここで紹介した以外の説明もあります
化学だいすきクラブニュースレター第38号(2018年4月1日発行)より編集/転載