化学だいすきクラブ

私が化学を選んだ理由(北海道大学名誉教授・徳田昌生)

この記事を書いた人: 徳田昌生 Masao Tokuda
北海道大学名誉教授,放送大学客員教授 2002年度日本化学会副会長 [専門]有機合成化学
北海道大学名誉教授・徳田昌生氏

化学への思い

小さい頃は鉱石ラジオやモーターなどの工作あるいは色が変化する実験などに興味をもち,理科に対する漠然ばくぜんとしたあこがれがありました。ただ,化学を強く意識したことはなく,高校の化学でも無機化学などの前半部分はあまり面白いとは思いませんでした。後半の有機化学に入って急に面白くなったことを記憶していますが,化学に対する思いの引き金になったのは,高校の先輩である井本稔先生が来校されて話された講演や先生の書かれた岩波新書「化学繊維」だったように思います。

化学を選んだのは大学になってから

私の入学した北大では理類か文類に分かれて入り,2年生の10月になって専門を決めるシステムでした。私は理類に入りましたが,学部学科を決めるにあたって化学にするか,金属あるいは建築(デザイン)を選ぶか,また化学の場合は工学部の化学系学科にするか理学部高分子学科にするか,かなり迷いました。最終的には新設の学科であることが決め手となって工学部の合成化学工学科を選びました。今でも,高揚感こうようかんと意欲あふれた新学科を選んだことは非常に良かったと思っています。

化学の中で有機化学を専門としたのも,井本稔先生(1976年日本化学会会長)が関係していました。最初に習った有機化学の講義があまりにも暗記的で少しいやけがさしていた頃に鈴木章先生(2010年ノーベル化学賞受賞)の「有機電子論」の講義を聞き,さらに井本稔先生の「有機電子論解説」を読んで有機化学が論理的に理解できることを知りました。これが私の将来を決めることになったわけです。

化学への恩返し〜子ども科学実験室〜

化学の研究では苦しいこともありましたが,喜びや面白さも多くありました。その感謝の意味で子ども達にサイエンスの面白さを伝えることを考え,北大の退職教員6名で「サイエンスアイ」(ホームページ:http://science2005.g1.xrea.com/)をつくり,2005年から理科の啓蒙活動を続けています。毎月定期的に市民図書館で小学生対象の「子ども科学実験室」や「子ども科学相談室」を行ったり,中・高校生を対象として研究室見学と体験実験をする「北大サイエンスツアー」などを行っています。我々自身も楽しみながらやっていますが,すばらしい素質をもつ子ども達が目を輝かせながら実験する姿を見ることができ,私の大きな喜びとなっています。

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写真: サイエンスアイのホームページ

化学だいすきクラブニュースレター第17号(2011年2月20日発行)より編集/転載

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