化学だいすきクラブ

私と化学(群馬大学教授・久新荘一郎)

この記事を書いた人: 久新荘一郎 きゅうしんそういちろう
群馬大学教授/2018年度日本化学会副会長/2018年度ケイ素化学協会会長/専門:有機ケイ素化学
群馬大学教授・久新荘一郎氏

「科学」と「化学だいすきクラブニュースレター」

2年ほど前から「化学だいすきクラブニュースレター」を読んでいます。読みながら,子どもの頃に毎月読んでいた本に久しぶりにめぐり会ったようななつかしい気持ちがします。そのわけをお話ししたいと思います。

私が小学校に入学したときに,学習研究社(学研)の「学習」と「科学」という本を毎月とっていました。どちらもその学年の子どもたちが興味をもつ記事がたくさんのっていて,しかも付録がついていました。たとえば「科学」には,酸やアルカリを調べる化学実験セット,ヒヤシンスの水栽培セット,温度計,岩石や鉱物の標本セットなどがついていました。私は小学生の頃は毎日,学校が終わると,ランドセルを家の玄関に置いてすぐに自転車を飛ばして,グラウンドで野球をしたり,野原でバッタ取りをしたり,池でトンボのヤゴ(幼虫)を取ったり,暗くなってからセミの幼虫が羽化する様子を見たりしていました。しかし「学習」と「科学」が届いた日は外に行かず,家で付録を組み立てて,その使い方の記事を読みながら遊びました。その頃,クラスのほとんどの友達が「学習」と「科学」をとっていました。私は小学校の6年間で科学が大好きになりました。私が科学(化学)の道を選んだ一番大きなきっかけは,小学校のときの「科学」の記事と付録がおもしろかったからです。

それから何十年か経ち,私は親になりました。私の子どもたちも「科学」と付録が大好きでした。しかし突然,「科学」は休刊になってしまい,私も子どもも大変がっかりしました。

それから何年かたった頃に「化学だいすきクラブニュースレター」が家に届きました。パラパラとめくってみて,すぐに昔の「科学」を思い出しました。よく似ています。記事を書かれた先生方のお名前を見て,「科学」はなくなってしまったけれど,「化学だいすきクラブニュースレター」をつくってくれてありがとうと思います。付録がついていればもっといいのにとも思います(無理を言ってすみません)。

昔の「科学」の付録は今ではほとんど残っていません。しかし付録についてきたクロッカスとヒヤシンスは春になると,うちの庭で元気に咲いています。朝,出かけるときに見て,これが私の原点だなと思いながら,大学に向かっています。

写真
写真: 学研のクロッカス(2017年3月6日,桐生の自宅で)

化学だいすきクラブニュースレター第39号(2018年7月1日発行)より編集/転載

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