活躍する化学 ガソリンは何から作られているの?
「ガソリンって何から作られているの?」みなさん,この質問に答えられますか? 答えは「原油」です。
さて,原油ってよく耳にしますが,どこで手に入れ,どのようにガソリンを作るのでしょうか?
原油が日本に届くまで
実はこの原油,日本ではほとんど採れません。中国・インドよりも更に西,日本から約12,000 ㎞(日本列島は約3,000 kmなので4倍!)も離れた中東地域(主にサウジアラビア,アラブ首長国連邦など)から運ばれてきます。
採掘された原油は,大型船(以降,タンカーと記載)に積み込まれます。このタンカーは,長さ330 m(東京タワーの高さと同じくらい),幅60 mと物凄く巨大なサイズです。積み込まれる原油は30万 kL(東京ドームの4分の1杯分,日本で使われる原油の半日分)にも達します。こんな大きな船ですがコンピューターで自動化されているため乗組員20名程度で航海しています。
タンカーは,3週間もの時間をかけて,ペルシャ湾からホルムズ海峡やマラッカ海峡を通り日本までやってきます。この航海路は,原油を輸入に頼っている日本の生命線といえる海路であり“オイルロード”(図1)と呼んでいます。
この原油は,北は北海道から南は大分まで日本全国に22か所ある製油所(※1)に運ばれます。
(※1)2017年4月時点の日本全国の原油処理能力は,日量351万8,800バレル≒約56万 kLとなっています。
原油からガソリンに
さて,製油所に運ばれた原油は,どのようにしてガソリンになるのでしょうか。
原油には,ガソリンや,灯油,軽油,重油などの色々な油が混ざっています。蒸留(※2)することにより,それぞれ分けることができます。
原油は,350 ℃まで加熱して,常圧蒸留装置(図2)を使っていろいろな油に回収します。その装置は,高さ約50 mの巨大な円柱状の設備です。
蒸留装置の上から,沸点の低いものから順番に家庭用のコンロのボンベとしてなじみが深いLPガス,自動車の燃料となるガソリン,飛行機の燃料となるジェット・暖房の燃料の灯油,トラックの燃料となる軽油,船の燃料となる重油に分けられます(図2)。このあと不純物である硫黄などを取り除き,ガソリンとなり,みなさんの元に届けられるのです。
(※2)蒸留とは混合物を一度蒸発させ,後で再び凝縮させることで,沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作
化学だいすきクラブニュースレター第39号(2018年7月1日発行)より編集/転載