化学だいすきクラブ

家庭でトライ!! 野菜の酵素で化学反応

家庭でトライ!! 野菜の酵素で化学反応

消毒薬のオキシドール(主成分は過酸化水素H2O2)を傷につけるとそこから泡が出ます。泡の正体は化学反応がおこって生じた酸素O2です。ダイコンなどの野菜でも同じ反応がおこり,泡が出ます。野菜の細胞内にはこの反応をおこりやすくする酵素(カタラーゼ)があるからです。いろいろな野菜にオキシドールを加え、泡のでかたを観察してみましょう。

「家庭でトライ」する前に,みなさんの家庭で料理に慣れている人に必ず相談してください。料理の残りの野菜クズでもできます。あとかたづけもわすれずに。

小学生以下の皆さんは,大人といっしょに実験をしましょう!

この記事を書いた人: 西川隆
アドバイザー

準備するもの

用意するものの一部
  • 約1 %過酸化水素H2O2水*
  • 各種野菜(数グラムずつ)
  • 卵販売用のプラスチック製ケース
  • カッター(または包ちょう)
  • まな板
  • 割りばし
  • ナベと水とコンロ

*つくり方:オキシドール(市販の殺菌消毒薬;約3 % H2O2)を水(水道水でもよい)で3倍にうすめる。

つくる総液量:調べる野菜一つにつき3〜6 mLをめやすにして液量を決める。

保存容器:ペットボトルなどプラスチック製容器に保存する。

・万が一,オキシドールが目に入った場合はすぐに水またはぬるま湯で目を洗う。

・ガラス製容器に保存すると内壁から泡が発生することがあるので,ガラス製容器に保存しない。これはH2O2がガラス中の微量不純物と接触して酸素が発生したためと考えられる。

・使用済みの過酸化水素水は水でうすめて流しなどに捨てる。もとの容器にもどさない。

・工業用・実験室用の濃い過酸化水素水(30 %以上)は皮ふにつけたりすると危険なので決して使わないようにする。

実験1 生の野菜で実験

実験方法1

実験方法1: 野菜をカッターでまな板の上で切る。大きさは小豆(あずき)の2,3粒程度でよい。その小片を割りばしで卵ケースのくぼみにうつす。

野菜をカッターでまな板の上で切る。大きさは小豆(あずき)の2,3粒程度でよい。その小片を割りばしで卵ケースのくぼみにうつす。

実験方法2

実験方法2: 野菜の小片に約1% H<sub>2</sub>O<sub>2</sub>水をそそいでひたし,泡が出るようすを観察する。 泡を観察しやすくするくふうをしよう(背景の色を変える,発生直後の小さな泡の出どころを拡大鏡でみる,泡がつぶれないように中性洗剤を加える,など)。

野菜の小片に約1% H2O2水をそそいでひたし,泡が出るようすを観察する。

泡を観察しやすくするくふうをしよう(背景の色を変える,発生直後の小さな泡の出どころを拡大鏡でみる,泡がつぶれないように中性洗剤を加える,など)。

実験2 ゆでた野菜で実験(実験1で泡が発生した野菜について)

実験方法1

野菜をまな板の上で切る。ニンジンなら厚さ5 mm程度にする。

実験方法2

実験方法2: ナベに水を入れて加熱し,沸騰したら野菜を入れてゆでる。ゆで時間は5~10分間をめやすとし,野菜の芯が柔らかくなるまでゆでる。湯から野菜を取り出し,水につけてなるべくはやく室温にもどす。 加熱時は必ずおとなといっしょに実験し,やけどや引火をしないよう注意する。

ナベに水を入れて加熱し,沸騰したら野菜を入れてゆでる。ゆで時間は5~10分間をめやすとし,野菜の芯が柔らかくなるまでゆでる。湯から野菜を取り出し,水につけてなるべくはやく室温にもどす。

加熱時は必ずおとなといっしょに実験し,やけどや引火をしないよう注意する。

実験方法3

泡の出かたをゆでた野菜(上の列)と生の野菜(下の列)で比較(左より,ポテト,ダイコン,ブロッコリー)

野菜をまな板の上で小片に切り,以後は生の野菜を使った実験1の実験方法2,3と同様に行う。なお,ゆでた野菜と生の野菜とを別のくぼみに入れ同時に約1 % H2O2水をそそいでもよい。

実験の解説

カタラーゼの反応段階
図:カタラーゼの反応段階

過酸化水素H2O2(H-O-O-H)は水(H-O-H)に比べ不安定です。カタラーゼに触れると次式のように気体O2が生成されて泡を発生し,他に水が生成されます。

2H2O2 カタラーゼ 2H2 + O2

カタラーゼの酵素としての働き(化学反応の促進力)はめざましく,カタラーゼ1分子あたり1秒間に数十万ものH2O2分子をつぎつぎに反応させます。その反応段階は上図:カタラーゼの反応段階のように説明されます。まずカタラーゼにH2O2が結合し,次にそのH2O2が分解されて酸素原子Oを残してH2Oが離れ,そして別のH2O2が結合し,残されていた酸素原子Oを回収してH2OとO2が離れ,カタラーゼはもとの形にもどります。

カタラーゼに限らず,一般に酵素には反応する分子を立体的にピッタリととらえる部位があり,とらえられた状態で反応する分子は化学反応しやすくなる,と考えられています。

みなさんの実験では野菜はゆでられると泡が出なくなりましたか。泡が出なくなったのは,加熱によりカタラーゼの立体的な形がくずれたため,と考えられます。しかしここでの実験では他の原因も考えられますね。カタラーゼがお湯に溶けていったためかもしれませんし,カタラーゼが分解されたためかもしれません。

◎次の発展実験にもチャレンジしてみよう。

1) 野菜の加熱調理に電子レンジも使われます。電子レンジで加熱するとどうだろう。

2) 泡の出かたは野菜の新鮮さや味の違いでどう変化するだろうか。

3) 野菜以外の米粒や木の葉や食用肉などではどうなるだろう。

カタラーゼは野菜に限らず生物界に広く存在しますが,生物にとってどんな場面で役立つでしょうか。酸化力があり生体を損傷することもあるH2O2を,カタラーゼは安全なO2とH2Oに分解できます。生物にとって役立ちそうですね。

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化学だいすきクラブニュースレター第12号(2009年7月10日発行)より編集/転載

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