活躍する化学 植物から作る和ろうそく
日本では11世紀頃から植物を原料としたろうそくが作られ,現在も「和ろうそく」としてお寺で使われていたり,仏具店などで販売されたりしています。昔の人が工夫して作った和ろうそくにも化学が活躍しています。和ろうそくの生産量日本一の石川県七尾市にある髙澤商店さんにお話をうかがいました。
Q.和ろうそくと洋ローソクの違いを教えてください。
A.一番の違いは原料です。洋ローソクは石油から採れるパラフィンが原料ですが,和ろうそくは櫨の実などの植物性のロウからできています。植物性のロウはすすが少ないのが特徴です。また,洋ローソクは糸を芯にしていますが,和ろうそくの芯は,灯芯草というい草の仲間の髄から採れる「灯芯」から作られます(写真2)。和ろうそくは,日本の自然の中にあるものを利用して作られています。
Q.ろうそくの芯について詳しく教えてください。
A.筒状にした和紙に,長いスポンジ状をしている灯芯を巻きつけ,真綿で固定して芯を作ります。この芯は先まで空洞になっていて,燃えている間も常に空気が供給され,風に強いしっかりした炎となります。また,スポンジ状の灯芯は毛細管現象によって,ロウを吸い上げます。効率よく燃えるために,昔の人が工夫をして作った形です。
Q.櫨ロウにはどんな特徴がありますか。
A.櫨の実から採取する櫨ロウは粘り気が多いため,ロウがあまり垂れ流れません。
Q.櫨ロウ以外で作ったろうそくはありますか。
A.菜の花の種,米ぬか,漆の実などから採れるロウで作ったろうそくがあります(写真3)。ロウは種類によって融点(液体になる温度)や粘度が異なります。そのため,新しいろうそくを作る際には,芯の太さとのバランスやロウを固める型との相性を考慮しなければなりません。例えば,ロウの融け方に対して芯が太すぎると燃えるのが速すぎてロウが垂れ流れてしまいます。逆に,ロウの融け方に対して芯が細すぎるとロウを吸い上げる力が弱いので,火が消えてしまいます。どのくらいの太さにするのが適切であるのか,組み合わせを試して商品化しています。
写真提供 髙澤ろうそく
化学だいすきクラブニュースレター第41号(2019年4月1日発行)より編集/転載