家庭でトライ!! 感熱紙の秘密を探る
熱で黒くなる感熱紙。コンビニエンス・ストアのレシートや券売機の切符,電気やガスの検針票などでも多く見られるようになりました。
今回は黒くなった感熱紙を,虫さされの治療薬を使って白くしたり,エタノールで黒くなった成分をとりだしたりしてみましょう。
エタノールはもえやすいので,火にかけてはいけません。
小学生以下の皆さんは,大人といっしょに実験をしましょう!
準備するもの
- 感熱紙*
- アイロン
- 虫さされの治療薬(「キンカン」など。アンモニアがとけているもの)
- 食酢
- 透明なコップ
- エタノール(薬局で売っている)
- 保護めがね
- 綿棒
*感熱紙の種類によって実験結果に差が出ることがあるので,レシートやワープロ用紙など何種類か用意しておくとよいです。
実験手順1
感熱紙に,アイロンをかけて真っ黒にする。
<注意>アイロンはいちばん弱い温度設定で十分です。やけどには注意しましょう。
実験手順2
黒くなった感熱紙に,虫さされ治療薬をぬると白くなる。白くなったところに綿棒で食酢をぬると,元のように黒くなる。
実験手順3
コップにエタノール10〜20 mL入れ,そこに②で黒くなった感熱紙を入れると,エタノールに色が移り黒くなる。もしも,エタノールがあまり黒くならなかったら,食酢を加えると黒くなる。
<アドバイス>エタノールの量が多いと色の変化がわかりにくくなることがあります。
実験手順4
③のコップに虫さされ治療薬を加えると,エタノールの黒い色が消える。
<コツ>虫さされ治療薬のキャップはドライバーなどを使うと取り外しやすい。
<注意>虫さされ治療薬が目などに入らないように注意しましょう。
実験の解説
感熱紙が黒くなるしくみ
感熱紙には,酸とふれると黒くなる性質を持つロイコ色素と,酸性の化合物である顕色剤が,紙の表面に塗ってあります。このときは,どちらも固体の別々の粒でいるので,両者はふれあわず,色が出ません。
ところが,プリンターの感熱ヘッドなど熱いものが感熱紙にふれると,その部分のロイコ染料と顕色剤が熱でとけて反応し,黒くなります。
アルコールはこれらの成分を溶かすことができるので,アルコールに感熱紙を入れると,感熱紙に塗られたロイコ染料や顕色剤が溶け出して反応し,黒い液になります。
それをアルカリ性の虫さされ治療薬に溶かすと,酸性でなくなるのでロイコ染料の色が消えてしまいます。だから酸性の食酢を加えると,再び黒くなるのです。
感熱紙の進化
ロイコ染料と顕色剤が反応してロイコ染料が黒くなるわけですが,この反応は,時間の経過や,アルコールなどの薬品の接触によりロイコ染料と顕色剤が離れて色が消えてしまうことがあります。また,消しゴムや粘着テープに触れると変色することがあります。これらの欠点を改善した高保存タイプの感熱紙も作られています。
化学だいすきクラブニュースレター第3号(2007年4月20日発行)より編集/転載