家庭でトライ!! 身近なものを使った水の電気分解
学校で,水の電気分解の実験をしたことがありますか? 学校では,実験器具としてH型ガラス管,電源装置,電極,そして電解液として水酸化ナトリウム水溶液を用いて実験を行います。いずれも,簡単には手に入らないものばかりです。今回は,H型ガラス管のかわりに醤油さし,電源装置として9 Vの電池(コンビニでも売っています),電極としてゼムクリップ,電解液としてミョウバン水溶液を用います。ミョウバンとは,なす漬けを作るときに使うもので,スーパーで売っています。すべて,身近にあるもので実験ができるのです。最後には,発生した気体に点火して,「小さな爆発」の実験も行います。それでは,身近なものを使って,水の電気分解を行ってみましょう!
小学生以下の皆さんは,大人といっしょに実験をしましょう!
準備するもの
- 醤油さし*1個
- ゼムクリップ2個
- 焼きミョウバン
- 9 Vの電池1個
- コップ1個
- 点火ライター
*醤油さしは材質が柔らかいプラスチックで,容積が4 mL程度の小さいもの
実験手順1
コップに焼きミョウバンをスプーン5〜6杯程度入れる。さらに,お湯を加えて,よくかき混ぜた後,お湯が冷めるまで待つ。
実験手順2
ゼムクリップ2個をのばし,ふたをとった醤油さしにさし込む。
<注意>ケガをしないように注意すること。
<コツ>醤油さしのふたをとり,醤油さしをつぶしてから,ゼムクリップを押し込むと上手く刺さります。
実験手順3
醤油さしの口いっぱいまで,ミョウバンの水溶液を吸い込ませる(醤油さしを指でつぶし,醤油さしの口を溶液に入れる。指の力を緩めると,自然と醤油さしがふくらみ,溶液が中へ入っていく。この操作を,2〜3回繰り返し,溶液を醤油さしいっぱいにする)。
実験手順4
ゼムクリップの電極を9 Vの電池につなぎ,電気分解させると気体が発生する。このとき,醤油さしから溶液がたれてくるので,容器で受ける。醤油さしいっぱいに気体がたまったら,電気分解をやめる。
<注意>ゼムクリップどうしが接触しないように注意! 接触していると,ゼムクリップが熱くなります
実験手順5
点火ライターをつけ,1 cm位離れたところから醤油さし内の期待を一気に点火ライターの炎に吹き付ける。
<注意>醤油さしの口は,人に向けないように注意! このとき大きな音がします(=小さな爆発)
実験の解説
電気分解すると,ゼムクリップの電極から気体が発生してきます。陰極(電池の負極とつながっている方)からは水素,陽極(電池の正極とつながっている方)からは酸素が発生しています。発生した水素と酸素の体積比は 2:1 となっています。各電極でおきている反応は次の通りです。
陰極:2H2O+2e– → H2+2OH– ⋯①
陽極:2H2O → O2+4H++4e– ⋯②
この2つの指揮を整理すると(①式×2+②式)、 2H2O → 2H2 + O2 となり,全体としては水が分解されて,水素と酸素ができていることがわかります。
水素は可燃性の気体,酸素は物が燃えるのを助ける働き(助燃性)があります。この水素と酸素の混合気体に火をつけると,爆発がおこります。特に今回の実験と同じ水素と酸素の体積比が 2:1 でできた混合気体に点火したときが最も激しく反応します。このため,この混合気体のことを爆鳴気といいます。この実験は,小さな醤油さしを用いることによって実験をマイクロスケール化し,安全に行えるように工夫してあります。
化学だいすきクラブニュースレター第1号(2006年11月15日発行)より編集/転載