化学だいすきクラブ

元素ファミリー 触媒として働き,ノーベル化学賞を受賞した元素たち

この記事を書いた人: 山本哲裕
麻布中学校・高等学校
周期表:触媒として働き,ノーベル化学賞を受賞した元素たち
特定の化学反応を起こりやすくし,
反応の前と後で変わらない物質を触媒といいます。これまでさまざまな触媒が発見・開発されて,私たちの生活を豊かにしてきましたが,中でもノーベル化学賞を受賞した化学反応に使われるものに注目してみましょう。

オストワルト法

白金 Pt 1909年 オストワルトが受賞

ダイナマイト(写真提供:カヤク・ジャパン株式会社)ダイナマイト(写真提供:カヤク・ジャパン株式会社)

白金を触媒として,アンモニアから硝酸を合成する工業的な製法である。ノーベル賞の生みの親であるノーベルは,ダイナマイトの特許で巨万の富を築いたが,その主成分であるニトログリセリンの製造に硝酸はかかせない。その一方で,硝酸は肥料や医薬品の原料にもなり,さまざまな利用方法がある。

ハーバー法

鉄 Fe 1918年 ハーバーが受賞

写真:フリッツ・ハーバー写真:フリッツ・ハーバー

鉄を触媒として,水素と窒素からアンモニアを合成する工業的な製法である。アンモニアは硝酸の原料になるため,この製法はオストワルト法の発展を後押しした。また,アンモニアから肥料を合成し,農作物を大量に生産できるようになり,人口の増加に寄与した。

せい合成ごうせい

ルテニウム Ru・ロジウム Rh 2001年 野依のより良治りょうじ氏が受賞

ℓ—メントール(写真提供:小堺製薬株式会社)ℓ—メントール(写真提供:小堺製薬株式会社)

右手と左手のように,鏡に映した関係にある構造の分子は,それぞれ生体に対する作用が異なることがある。ルテニウムやロジウムなどを触媒として用いることで,一方だけを選択的に合成する方法(不斉合成)が可能になった。そして,ハッカの主成分であるℓ—メントールを人工的に合成できるようになった。

クロスカップリング

ニッケル Ni・パラジウム Pd 2010年 鈴木あきら氏と根岸ねぎし英一えいいち氏が受賞

クロスカップリングクロスカップリング

クロスカップリングは,「2種類の異なる分子を結びつける」という意味である。ニッケルやパラジウムなどを含む触媒を使い,人工的につくることは難しかった複雑な化合物を効率的に作ることが可能になった。

化学だいすきクラブニュースレター第43号(2019年12月1日発行)より編集/転載

先頭に戻る