活躍する化学 発泡入浴剤の泡の話
泡の正体
季節が冬になって寒くなってくると,普段はお風呂に何も入れない人も「たまには入浴剤を入れて温まってみようかな…」とか「温泉に行った気分になってみよう!」なんて思う人はいないでしょうか。発泡入浴剤をお風呂に入れると,瞬く間に無数の泡が出てきます。あの泡の正体は何だと思いますか? その秘密を探るために,発泡入浴剤の成分表示(表1)を見てみましょう。
表1:発泡入浴剤の成分表示
- A社
- <有効成分> 炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,硫酸マグネシウム,硫酸ナトリウム(無水)
- <その他の成分> フマル酸,PEG6000,ブドウ糖,香料,青1,黄4,赤102,他
- B社
- <有効成分> ショウキョウ末,炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム,乾燥硫酸ナトリウム
- <その他の成分> コハク酸,フマル酸,DL-リンゴ酸,香料,黄5,黄4,赤106,他
- C社
- <有効成分> 炭酸水素ナトリウム,炭酸ナトリウム
- <その他の成分> コハク酸,PEG6000,ケイ酸カルシウム,酸化マグネシウム,香料,黄4,他
表1より,炭酸水素ナトリウムや炭酸ナトリウムが有効成分であることがわかります。そして,その有効成分とフマル酸,コハク酸,リンゴ酸などが化学変化することにより二酸化炭素が発生します。例えば,炭酸水素ナトリウムがフマル酸と反応すると,図1に示すように二酸化炭素が発生します。
炭酸水素ナトリウム(重曹)は,温泉の天然成分としても知られ,入浴剤のほか,ふくらし粉,医薬品,飼料,農薬などにも使われています。また,フマル酸は,菓子類,惣菜,ハムやソーセージなどにも使用されています。
二酸化炭素を多く含む天然温泉
日本には二酸化炭素を多く含む温泉(二酸化炭素泉)があります。二酸化炭素泉は,入浴すると全身に二酸化炭素の泡が付着するのが特徴です。二酸化炭素泉の中でも大分県の長湯温泉は有名です。31 ℃とぬるい湯ですが,泡が浸透して温まると言われています。1934年,長湯温泉を「これぞ,ラムネの湯だぜ」と世界に紹介したのが文豪・大佛次郎だそうです。天然の二酸化炭素泉は日本では比較的少ない泉質ですが,最近ではスーパー銭湯などで人工の二酸化炭素泉も見かけることもあり,珍しくなくなりました。
今回は冬に適した発泡入浴剤の泡の話でしたが,夏には清涼感あふれる「COOL」な入浴剤も販売されています。成分は何が違うのか,調べてみるのも面白いと思いますよ。季節によって入浴剤を選んで入る。お風呂好きな日本人ならではの楽しみ方かもしれませんね。
- 参考資料
- ラムネ温泉館(2020年5月現在)http://www.lamune-onsen.co.jp/about/
- たのしい理科の小話事典(東京書籍)
化学だいすきクラブニュースレター第43号(2019年12月1日発行)より編集/転載