元素ファミリー オリンピックと元素たち
東京オリンピック・パラリンピックが日本で開催されます。
日本は都市鉱山と言われており,パソコンや携帯電話などから金32 kg,銀3500 kg,銅2200 kgが回収され,東京2020のメダルに生まれ変わることになりました。
これらの金属は,メダル以外にどのような用途があるのでしょうか。
金・銀・銅
金銀銅は周期表の11族の元素であり,貴金属でもある。
銀は,可視光領域全体で高い反射率を示すが,銅は青から黄色の光を反射しにくいため赤みのある金属となり,金は青から緑色の光を反射しにくいので銅より黄色みを帯びている。
続日本紀の記述から,日本で最初の砂金の産地は宮城県の涌谷町とされている。また,日本書紀によると対馬銀山は日本最古の銀山であり,銀を含んだ鉱石と鉛を反応させて銀を分離したと考えられている。銅は,弥生時代に中国から銅剣や銅鏡などの青銅器として入ってきた。
これらの金属は,貴重なものであったため,古くは貨幣として使われた。現在,一般に流通している硬貨は,1円玉以外は全て銅を主成分とする。金や銀1 gを延ばすと,それぞれ直径0.007 mm,0.5 mm,長さが3000 m,1800 mの糸になり,広げると厚さ0.00007 mm,0.0015 mm,面積0.7 m2,0.06 m2の箔になる。
金閣寺(写真1)には金箔が貼られている。また,いずれも電気伝導性が非常に高いという特徴がある。金は抵抗が小さく,さびにくいので接続部に使われることが多い。銀は,最も電気伝導性に優れている(写真2)。銅は最も安価なので幅広く使われている(写真3)。
化学分野では,金を触媒とした排気ガスの浄化や,銀や銅を触媒とした有機物の合成などが知られており,日本が世界をリードする研究分野の一つである。
化学だいすきクラブニュースレター第44号(2020年4月1日発行)より編集/転載