化学だいすきクラブ

私と化学(2020年・2021年度 日本化学会会長・小林喜光)

この記事を書いた人: 小林喜光 こばやしよしみつ
2020年・2021年度 日本化学会会長 株式会社三菱ケミカルホールディングス 取締役会長 [専門]放射線光化学,触媒化学,社会経済システム
2020年・2021年度 日本化学会会長・小林喜光氏

近年は,豪雨,洪水,猛暑などの多くの天気に関係する災害が引き起こされ,ニュースでも大きく取り上げられています。みなさんも耳にしたことのある「地球温暖化」が,これらの原因ではないかと言われています。

ここ100年で地球の気温はおよそ1℃以上高くなりました。このまま「地球温暖化」が進むとどうなるでしょうか。北極や南極の氷が融けたりして海の表面の高さが上がり,それによって高さの低い島国が海に沈んでしまったり,ホッキョクグマがエサを食べられずに数が減ってしまったりするとも言われています。

この「地球温暖化」の原因が何なのか知っていますか?人類の生活によって,二酸化炭素(CO2,シーオーツー)やメタン(CH4,シーエイチフォー)などの温室効果ガスが増えすぎたことが原因と考えられます。

このCO2は動物が呼吸で吐き出す息に含まれています。動物が呼吸をすればするほどCO2は増えますが,実は植物が光合成でこのCO2を食べて減らしてくれています。100年以上前の地球ではそのバランスが取れていました。つまり,世の中が便利になる前の地球では,CO2は動物と植物の間を行ったり来たりするだけで,地球への影響もほとんどありませんでした。

ところが人類がエンジンを発明し,生活を便利にするために石油・石炭・天然ガスなどをたくさん燃やすようになってから,植物がCO2を食べきれなくなり,「地球温暖化」がいっきに進んでしまいました。みなさんにとって,生活においてなくてはならない電気を作るのにも,プラスチックを作るのにも,結果としてたくさんのCO2が生じて大気中に出ています。これだけ聞くとなんだか「化学」は悪者のように思えてしまいます。

私たちは「地球温暖化」を防ぐために何ができるでしょうか?使う電気を減らしたり,使い捨てするプラスチックを減らしたりすればよいのでしょうか?実はそれだけでは全然足りないことがわかっています。大気中に出ていってしまったCO2を減らさなければいけません。大学や会社では,大気中からCO2を取り出して回収する研究や,CO2を原料にしてプラスチックを作る研究など,地球を救うための研究がたくさんされています。このように,実は「化学」は悪者ではなく,「地球温暖化」を防ぐ正義の味方なのです。「化学」を使って,一緒に地球を救いませんか?

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イメージイラスト: 「化学」は「地球温暖化」を防ぐ正義の味方

化学だいすきクラブニュースレター第46号(2020年12月1日発行)より編集/転載

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