元素ファミリー 植物に不足しやすい元素たち
自然界では落ち葉や動物の糞などが微生物に分解され,植物の養分として循環されています。
しかし,野菜や果物の収穫量を増やしたり,美しい花を咲かせるためには,
畑や花壇ではどうしても養分が不足するので,不足しやすい元素を肥料として補う必要があります。
今回は,植物に不足しやすい三つの元素をみていきます。
窒素 N
窒素は,葉緑体に含まれる葉緑素(写真1)を構成する元素の一つです。葉緑素が豊富にあると,光合成を盛んに行うことができるため,茎や葉の成長が速くなります。つまり,葉の部分を食用とするキャベツやホウレン草などには特に重要な元素です。空気に含まれる気体の窒素は安定で,植物は直接利用できないため,硫安や尿素のような窒素肥料として与える必要があります。また,葉緑素は,漢字のとおり緑色をしており,『カエデの紅葉やイチョウの黄葉』(写真2)は,葉緑素の分解などが関わって起こる現象です。
リン P
リンは,遺伝子の本体といえるDNAやRNA,そして細胞膜(写真1)を構成する元素です。細胞分裂が盛んに行われる花や実,さらに種子の成長に影響するので,実の部分を食用とするピーマンやトマト(写真3)などには特に重要な元素です。また,呼吸で得たエネルギーを蓄えておくATPという物質の原料にもなるなど,様々なところで必要となります。不足しやすいリンは,過リン酸石灰などのリン酸肥料で補います。
カリウム K
カリウムは,細胞内の水に溶けており,植物内で起こる様々な化学反応で必要になります。特に根の成長に作用するので,根を食用とするニンジンやサツマイモ(写真4)などには重要な元素です。また,植物を丈夫にし,病気にかかりにくくするとも言われています。不足しやすいカリウムは,硝酸カリウムなどのカリ肥料として補います。
化学だいすきクラブニュースレター第47号(2021年4月1日発行)より編集/転載