化学だいすきクラブ

活躍する化学 身の回りの電池

活躍する化学 身の回りの電池

塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜると塩化ナトリウムができるように,ある物質を別の物質と混ぜたり,必要に応じて温めたりすることで,もとの物質とは違う物質ができることを化学反応と言います。電池とは,化学反応を利用して電気を作り出す装置のことです。どんな電池も,プラス極に使う物質(正極物質)とマイナス極に使う物質(負極物質)に加え,食塩水のように電気を通す液体(電解液)からできています。この物質の組み合わせで,どのような電池ができるのか,また電池のサイズについてもいっしょに考えていきましょう。

この記事を書いた人: 鎌田正裕
東京学芸大学

最も身近な電池:アルカリマンガン乾電池

アルカリマンガン乾電池は,正極物質に二酸化マンガンを,負極物質に亜鉛金属の粉末を,そして電解液に濃い水酸化カリウム水溶液を使用しています(図1)。筒形のものに加えボタン型の電池もあり,いろいろな形や大きさのものが売られています。以前は,マンガン乾電池がよく使われていましたが,最近は,性能のよいアルカリマンガン乾電池が主流になってきました。

コイン型リチウム電池

ゲーム機や小さなリモコンによく使われています。正極物質はアルカリマンガン乾電池と同じで二酸化マンガンですが,負極物質には亜鉛よりも陽イオンになりやすい,リチウムという金属が使われています。リチウムは,水とも反応してしまうため,電解液には水溶液を使えず,有機電解液というものが使われています。また,リチウムが陽イオンになりやすいため,この電池の電圧は,アルカリマンガン乾電池の電圧が1.5 Vなのに対し,3 Vと高いことも大きな特徴です。

空気中の酸素で動く電池:空気亜鉛電池

みなさんのおじいさんやおばあさんが,もし補聴器を使っていたら,その電池をちょっと見せてもらってください。PRで始まる名前の電池なら空気亜鉛電池と呼ばれるものです(写真1)。電池の電圧は1.4 Vで,外見も構造もアルカリマンガン乾電池のボタン型によく似ていますが,二酸化マンガンの代わりに空気中の酸素を使う点が大きな違いです。空気中の酸素を使うことで,二酸化マンガンがいらなくなるので,そのぶん軽い電池が作れ,補聴器に向いています。この電池のプラス極をよく見ると,空気中の酸素が通る小さな穴があることがわかります。

電池のサイズ

コイン型のリチウム電池の型番は,CR2032のようになっています。CRはリチウム電池であることを表しています。CRに続く数字の最初の2桁が直径を表し,次の2桁が厚さです。したがって,CR2032は直径が20 mmで厚さが3.2 mmとなります(写真2)。また,CR1620なら,直径が16 mmで厚さは2.0 mmです。電池を使うときには,決められた種類と大きさを守って正しく使ってください。

図1
図1: アルカリマンガン乾電池
写真1
写真1: 空気亜鉛電池:プラス極表面に小さな穴が見える
写真2
写真2: 型番とサイズの関係 CR2032(左)CR1620(右)

化学だいすきクラブニュースレター第47号(2021年4月1日発行)より編集/転載

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