化学だいすきクラブ

活躍する化学 スライムの化学

活躍する化学 スライムの化学

~おもちゃとあなどるなかれ! 保冷ほれいざいから水質浄化じょうかにがん治療ちりょうまで~

この記事を書いた人: 瀧場進
国本小学校

スライムって何?

スライムとは,ねばねばした不思議なおもちゃのことです。いろいろな種類や作り方がありますが,洗たくのりとホウしゃで作る方法が身近な科学実験として知られています。みなさんの中にも,学校や実験教室などで作ったことがある人もいるでしょう。今では,くわしい作り方をインターネットで調べることもできるので,興味がある人は,おとなの人といっしょに作ってみましょう。

この実験で使う洗たくのりにはPVAがふくまれています。PVAとはポリビニルアルコールのことです。「ポリ」は「たくさんの」という意味で,化学では,きまった構造がくさりのようにくり返し連なった高分子化合物であることを表します。

このPVAをふくむ洗たくのりの水溶液に,目の消毒などに使われるホウ砂の水溶液を加えると,サラサラだった液がみるみるうちにねばねばしたスライムに変わります。

なぜ,ねばねばになるの?

水に溶けたPVAの分子のくさり同士の間に,ホウ砂の水溶液のホウ酸イオンが入りこんで「橋」を作り,その間に水の分子をふくむことができるようになるためです(図1)。この「橋」がくっついたり離れたりずれたりするので,スライムは形が変わります1)

おもちゃ以外に使い道はないの?

遊んだ後はジッパー付きのポリ袋に入れて(写真1)冷凍庫で冷やすと,保冷ほれいざいとして使うことができます。昔は市販しはん保冷ほれいざいにも同じものが使われていました。

ある大学では,スライムの「橋」に手を加えて,水にふくまれる重金属イオンやリン酸イオン,放射性セシウムイオンなどの有害な物質を取りこんで回収する技術の研究が行われています2),3)

別の大学では,PVAがホウ酸イオンでスライムになる反応を応用して,ホウ素中性子捕捉ほそく療法りょうほうという,がんの治療ちりょう法の効果を劇的に向上できたそうです4)

スライムにはいろいろな使い道や可能性があるようです。みなさんも調べて研究してみてはいかがでしょうか。

参考資料(リンク先URLは2022年2月23日現在)
1)国立大学 56 工学系学部ホームページ おもしろ科学実験室(工学 のふしぎな世界)高分子の性質を探る ~スライムを作って、高分子 の性質を知ろう! https://www.mirai-kougaku.jp/laboratory/pages/191108_02.php
2)首都大学東京 大学院都市環境科学研究科 分子応用化学域 教授 久保 由治,水質浄化・モニター用分子組織スライム(含ホウ素高分子ゲル) https://shingi.jst.go.jp/pdf/2011/tmu2.pdf
3)西藪 隆平 (2010). 機能性スライムを用いた水質汚染物質の分離・回収プロセスの開発 日揮・実吉奨学会研究助成金受給者研究報告集 29.74-77
4)東京工業大学 科学技術創成研究院 化学生命科学研究所の野本貴大助教と西山伸宏教授(川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター主幹研究員兼任)の研究グループ,「スライムの化学」を利用した第5のがん治療法 https://www.titech.ac.jp/news/2020/046060.html
図1
図1: PVAにホウ酸イオンが橋をかけ,その間に水分子が入る
写真1
写真1: 図 1 PVAにホウ酸イオンが橋をかけ,その間に水分子が入る

化学だいすきクラブニュースレター第48号(2021年7月1日発行)より編集/転載

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