元素ファミリー 昆虫が世界の食糧難を救う!?
江戸時代にはイナゴ,スズメバチなどの幼虫(ハチの子),ゲンゴロウ,カミキリムシなどが食べられていたという記録がある。現在でも昆虫を食べる文化が残っている地域も多い。
2013年,国際連合食糧農業機関は「昆虫が今後の食糧になり得る」というレポートを発表した。
古くて新しい昆虫食を「化学のメガネ」で見ていこう。
伝統食材:ハチの子
クロスズメバチなどの幼虫(ハチの子)を「へぼ」といい,かつて,長野県から愛知県の山間部において,「へぼ」は貴重なタンパク質として重要だった(写真1)。タンパク質を構成する主な元素は,炭素C,水素H,酸素O,窒素N,および硫黄Sの5種類である。
出典:農林水産省Webサイト https://www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/search_menu/menu/hebomeshi_aichi.html
ヨーロッパイエコオロギの養殖
俳句において「虫」と言えば,秋に草むらで鳴く虫たちの総称である。コオロギは,リリリリと鳴く。そのコオロギも,タイ東北部の都市コンケン周辺では,ヨーロッパイエコオロギの養殖が行われている(写真2)。コオロギは繁殖しやすく飼育が容易で,約1ヶ月で成虫になる。100 g中のタンパク質の量はウシの約3倍で,鉄Fe,マグネシウムMg,カルシウムCaも豊富である。
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食用及薬用昆虫に関する調査
大正時代には,農商務省の昆虫学者である三宅恒方によって,タンパク質を含む食用・薬用昆虫の全国的な調査が初めて行われた。その結果,昆虫食はハチ類14種,ガ類11種,バッタ類11種など,合計55種に及んだ。また,地方別では長野県の17種を筆頭に,41都道府県に及んだ(写真3)。
現代の食材:コオロギの粉末,カイコのさなぎの粉末
現代では,虫に抵抗がある人も食べやすい見た目や味の商品が登場している。例えば,コオロギを粉末にしたお菓子であれば食べやすい(写真4)。また,カイコは繭(写真5)をつくり,その繭から絹糸をとって布(シルク)にするが,カイコそのものも栄養価の高い食品である。いずれも豊富なタンパク質に加え,主に炭素C,水素H,酸素Oからできている脂肪や炭水化物などを含み,栄養価を高めることができる。
出典:NHK for School「ミクロワールド」糸をつくる生きた工場 カイコ https://www2.nhk.or.jp/school/movie/bangumi.cgi?das_id=D0005100118_00000
化学だいすきクラブニュースレター第49号(2021年12月1日発行)より編集/転載