化学だいすきクラブ

私と化学(2022年度 日本化学会副会長・相田美砂子)

この記事を書いた人: 相田美砂子 あいだみさこ
2022年度 日本化学会副会長/広島大学特任教授,学長特命補佐/日本学術会議会員 [専門]量子化学,計算化学
相田美砂子氏

化学(かがく)は,英語では,chemistry(ケミストリー)です。英語のchemistryには,「化学」という意味だけでなく,「相性(あいしょう)」あるいは「人と人とが関係しあう」のような意味もあります。たとえば,

私たちは相性がよい。

We have good chemistry.

のように使われます。相性がよい人と人とが協力すると,1+1=2以上の何かが生まれてくるのです。

小学生のみなさんも,中学生のみなさんも,学校では「理科」の中で「化学」を学んでいますが,高校生になると,「物理」,「化学」,「生物」,「地学」など別々の科目になります。

私は大学に進学するときに,理学部化学科を選びました。私は数学が好きでしたが,理科4科目(当時の高校では,化学,物理,生物,地学のすべての科目を学びました。)のなかでは,化学が一番好きかな,と思ったからです。化学の実験で,色が変わるのが好き,というような気持ちだったと思います。

大学の化学科に入学してから,化学反応は,理論的に予測あるいは設計できるものである,ということを学んでいきました。その理論は量子力学に基づくものであり,その理論を実際に使うためには,大型コンピュータが必要であることも学びました。

つまり,「化学」の理論を理解し,それを実際に適用するためには,「数学」も「物理」も,そして最新のコンピュータも必要なのです。その理論に基づき,最新のコンピュータを使って,生命にとって重要な核酸やタンパク質,糖などを研究することができます。さらに,実験結果,計算結果,等の多くのデータは,「多すぎて取り扱うことができない」のではなく,「大量だから活用する価値がある」データとして,データサイエンスの対象となっており,それにより,今まで気がつかなかったことも見えるようになっています。

このように,「化学」という学問分野は,孤立したものではありません。高校の授業では別々の科目として学びますが,数学,情報,物理,化学,生物,地学は,いずれも互いに関連しています。それらのなかでも,化学が,他の分野との関連が最も大きい,と思います。化学そのものが,他の分野と‘good chemistry’(相性がよい)ですね。新しい何かが生まれてきます。

図
図: 数学,情報,物理,化学,生物,地学は,いずれも互いに関連しています

化学だいすきクラブニュースレター第52号(2022年12月1日発行)より編集/転載

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