活躍する化学 料理を化学の視点で見てみよう!
料理は化学実験!?
みなさんは料理したことがありますか?「料理」は,もともと「料」がはかる,「理」がおさめるという意味をもっていることから「物事を適当に処置する」といった意味の漢語が由来とされています。料理の方法は食材がもつ化学的性質に基づいて工夫されています。化学の視点で料理を見てみると,米などの主食はデンプン,肉や魚などはタンパク質を主とした化学物質でできていますし,調味料も様々な化学物質で構成されています。ですから「料理」は,食材や調味料といった化学物質を使って,適切な実験方法でおいしさを生み出す化学実験であると言えます。ここでは,化学的においしく料理をする方法をいくつか紹介していきます。
化学的に料理を考えてみよう!
今回は,化学の視点から料理のポイントをいくつか紹介します。ぜひ,保護者の方と料理をするときの参考にしてください。
緑黄色野菜をゆでるときはふたをしない
緑黄色野菜をゆでると,細胞内の酢酸やシュウ酸がお湯に溶けだし,酸性となることで野菜の色は悪くなってしまいます。これを防ぐ方法は,ゆでるときにふたをしないことです。酢酸などは揮発性(蒸発しやすい)なので,ふたをしなければお湯が酸性になりにくくなり,色が悪くなるのを防ぎやすくなります。
ドレッシングをかけるべきか迷ったときは…
緑黄色野菜を食べるときはドレッシングをかける方が良いです。これは,緑黄色野菜に多く含まれるビタミンA,D,K,Eは脂溶性ビタミンであるため,ドレッシングの油に溶かして摂取する方が体に吸収されやすいからです。
エビは用途により切り込みを入れる場所を変える
エビはそのまま加熱してしまうとタンパク質の変性により丸まってしまいます。天ぷらやエビフライといったまっすぐな状態が良い場合は,腹に数か所切り込みを入れて,筋が切れるように身を反らせて伸ばすとよいです。エビチリやエビマヨといったソースによく絡ませたい場合は,背に切り込みを入れて広げておくことで表面積を増やしておくと,中まで味がしみこみやすくなります。
果物をおいしく食べるなら少し冷やす
果物の甘み物質である果糖(フルクトース)とブドウ糖(グルコース)は,α型とβ型という2 つの構造をもっています。これらは同じ種類,同じ数の元素で構成されながら構造が違う「異性体」と呼ばれます。
フルクトースを例に見てみましょう。フルクトー スは,β型の方がα型よりも甘い,温度によって構造を変えるという2つの特徴をもっています。低温では,ほとんどがβ型であるため甘味が強まり,高温ではα型が増え,β型が減るので酸味が強くなります。ですから,果物を食べる前に少し冷やしておくと常温のものよりも甘い状態で食べることができます。
この他にも,化学的性質に基づいた料理方法はたくさんあります。料理をする際は,どうしたらおいしく食べられるかを化学的に考えてみるとよいでしょう。
- 【参考文献】
- 1)料理のコツ解剖図鑑,豊満美峰子 監修(2015,サンクチュアリ出版)
- 2)「スイーツや料理をおいしく感じる」科学,石川伸一(『化学と教育』2019年67巻8号,p.372-373)
化学だいすきクラブニュースレター第53号(2023年4月1日発行)より編集/転載