君も化学者! パイナップルの香り成分を作ろう!
実験は必ず理科の先生と一緒に行ってください。
実験するときは,保護めがね,冷凍庫用皮手袋を着用してください。
換気のいい部屋で部屋で実験してください。
氷酢酸,濃硫酸などの試薬には触れないように注意してください。
準備するもの
- エタノール
- 氷酢酸
- 濃硫酸
- 沸騰石
- 純水
- 試験管2本
- 試験管立て
- ビーカー2個ガラス管を差し込んだシリコン栓(ガラス管の長さは10 cm以上)
- 駒込ピペット4本
- 薬さじ
- 温度計
- スタンド2台
- 加熱器具(三脚,金網,ガスバーナー,ガスマッチ)
- 試験管ばさみ
- 軍手
実験方法1
試験管に沸騰石を数個入れる。その後,その試験管に,エタノール2 mL,氷酢酸2 mLを入れる。ここで加熱前の試験管内のにおいを嗅ぐ。
<注意1>においを嗅ぐときは,直接ではなく,手であおぐようにして嗅ぐ。特に,氷酢酸は刺激臭がするため十分注意する。
<注意2>点火時に引火するおそれがあるため,試薬をとり終わったらすぐに試薬瓶に蓋をする。
実験方法2
濃硫酸0.5 mLをゆっくりと試験管に入れ,ガラス管を差し込んだシリコン栓を試験管にはめる
<注意1>濃硫酸を入れると急激に温度が上がるので,突沸を防ぐために沸騰石は必ず最初に入れておく。また,火傷に注意する。
<注意2>ガラス管は,シリコン栓の上部を長くする。これは,加熱時に蒸発した物質を冷まして液体にし,試験管に戻すためである。
実験方法3
ビーカーに水を入れ,70℃になるまで,実験方法2の試験管をときどき振り混ぜながら加熱する。70℃になったら火を止める。
<注意1>火傷に注意する。試験管に触れる時は,軍手をする。
<注意2>試験管を振るときは,試験管ばさみを使う。
実験方法4
試験管を70℃の湯に浸したまま,ときどき振り混ぜながら5分程度加熱する
<注意1>火傷に注意する。試験管に触れる時は,軍手をする。
<注意2>試験管を振るときは,試験管ばさみを使う。
実験方法5
5分程度加熱したら,水を入れた別のビーカーに試験管を移しかえて冷却する。その後,別の試験管にとった10 mLの純水に,実験方法4の試験管の中の液体を静かに注ぎ,試験管内の様子を観察し,試験管内のにおいを嗅ぐ。
<注意1>においを嗅ぎすぎないこと。
<注意2>実験後の廃液は,先生の指示にしたがって適切に処理すること。
実験の解説
この実験では,エステル化という化学反応を利用しています。氷酢酸は食酢にも含まれている酢酸という物質,エタノールは消毒液などに使われているアルコールで,いずれも身近な物質です。酢酸とエタノールが反応すると,酢酸エチルという物質と水ができます。濃硫酸は,この反応を速める働きをします。酢酸エチルはエステルという化合物の一種で,パイナップルの香りにも含まれており,果実臭がします。
酢酸,エタノール,硫酸は水に溶けやすいのに対して酢酸エチルは水に溶けにくいため,実験方法5では酢酸エチルが水溶液から分離して2層になり,上層が酢酸エチルの層,下層が水溶液の層になります。反応後のにおいには,未反応の酢酸のにおいも混ざっています。酢酸のにおいを取り除くために,反応後の水溶液に重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えて,未反応の酢酸を中和する方法もあります。ぜひ試してください。
化学だいすきクラブニュースレター第55号(2023年12月1日発行)より編集/転載