化学だいすきクラブ

元素ファミリー 意外と奥が深い,ロウソクの化学

元素ファミリー 意外と奥が深い,ロウソクの化学

ロウソクに火をつけると,炎の熱で周囲のロウが融けることで,液体になったロウが芯を伝わっていきます。ロウソクの原料は何か,「化学のメガネ」で見ていこう!

この記事を書いた人: 松岡雅忠
福岡大学

マイケル・ファラデーと「ロウソクの科学」

写真1 マイケル・ファラデーの切手写真1 マイケル・ファラデーの切手図1 ロウの分子構造の一部(<span class=formula>C</span>は炭素原子,<span class=formula>H</span>は水素原子,<span class=formula>O</span>は酸素原子)を表したものです。ロウの分子は,炭素原子が数多くつながった,とても長い分子です。図1 ロウの分子構造の一部(Cは炭素原子,Hは水素原子,Oは酸素原子)を表したものです。ロウの分子は,炭素原子が数多くつながった,とても長い分子です。

 19世紀イギリスの科学者マイケル・ファラデー(1791-1867,写真1)は,電気と磁気の関係や,電気分解の法則などを発見した,19世紀最大の科学者として知られています。ファラデーは毎年クリスマスに,子供向けに科学を語る会(クリスマスレクチャー)を開いており,なかでも「ロウソクの科学」のお話は有名です。なんとこのクリスマスレクチャーは現在まで続いています。ロウソクが燃える時に,液体となったロウが芯を伝わって上昇することは,皆さんも知っていると思います。ファラデーはそのことを説明するために,水の入った洗面器にタオルを掛けると,水がタオルを伝って移動し,床にポタポタ垂れる様子を観察してもらいました。このお話は「ロウソクの科学」という本にまとめられています。図書館で読んでみてはいかがでしょうか。

ところで,ロウには,動植物から作られるロウ(脂肪のなかま)と,石油から取り出されるロウの二種類があり,どちらも炭素原子がたくさんつながった構造を持っています(図1)。その代表として,植物由来の木ロウと石油由来のパラフィンロウを例に,ロウソクファミリーの特徴をみていきましょう。

もくロウ

写真2 ハゼノキの実写真2 ハゼノキの実写真3 和ロウソク(PIXTA)写真3 和ロウソク(PIXTA)

木ロウはハゼノキの実(写真2)から作られるロウです。ハゼノキの実は,種の周りを脂肪が取り囲んでいます。この実を蒸して柔らかくし,熱いうちにしぼることで,脂肪を取り出すことができます。この脂肪を軸の部分に固めて作った「和ロウソク(写真3)」はお寺などで利用されており,「ロウソクの科学」にも,日本から輸入された和ロウソクの記述があります。このほか,ハチの巣の壁からとれる蜜ロウは動物由来のロウとして利用されています。

パラフィンロウ

写真4 洋ロウソク写真4 洋ロウソク

パラフィンロウとは,石油から得られるロウのことで,洋ロウソクともよばれます。現在,家庭で使用されるロウソクはパラフィンロウ(写真4)が主流で,木ロウと比べて,安く入手することができます。

木ロウとパラフィンは分子構造が似ている部分があり,長くつながった炭素原子のそれぞれに水素原子が結合しています。ロウを温めると,炭素原子の鎖が動きやすくなるため,やわらかくなります。また,空気中で完全に燃えると二酸化炭素CO2と水H2Oに変化します。2種類のロウは,原料は異なりますが,どちらも同じような化学的性質を持っています。

化学だいすきクラブニュースレター第56号(2024年4月1日発行)より編集/転載

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