
元素ファミリー 包丁に含まれる元素たち
みなさんの家の台所には,様々な調理器具や食器があります。今回は特に包丁の材質に注目してみましょう。
鋼

鋼は,炭素Cが0.04~2%の割合で含まれる鉄Feのことです。純粋な鉄よりも強度などが増し,加工しやすくなります。
日本では「たたら製鉄」という方法で,約1400年前からつくられており,クワなどの農具,そして日本刀などに用いられてきました。鉄と酸素Oが結びついた砂鉄と木炭を混ぜて,熱風を送って高温にします。すると,砂鉄の酸素が木炭に含まれる炭素と結びついて二酸化炭素CO2となり(「砂鉄が還元された」と言います),鉄と炭素が混ざったもの,つまり鋼ができるのです。ただし鋼の包丁(写真1)はさびやすく,手入れが欠かせません。
ステンレス鋼

ステンレス鋼は,クロムCrが10.5%以上,炭素が1.2%以下の割合で含まれる鉄のことです。ほかにニッケルNiが含まれているものもあります。英語ではstainless steel,「さびない鋼」という意味で,鋼にクロムやニッケルを混ぜることによってさびにくくなります。それならクロムやニッケルを多くすればよいと思うでしょうが,硬くなって加工しにくくなったり,材料費が高くなります。
包丁(写真2)でもっとも用いられる素材である他,スプーンやフォークなどの食器や流し台(シンク)にも用いられています。
セラミックス

セラミックスとは粘土などを焼き固めてつくられたお皿や花瓶などの陶器を指すことが多いですが,包丁(写真3)に用いられるのはジルコニウムZrと酸素が結びついたジルコニア(二酸化ジルコニウムZrO2)という物質です。人工の歯にも使われるように非常に硬く,薄くて軽く,切れ味が良い一方で,刃が衝撃に弱く欠けやすいです。
化学だいすきクラブニュースレター第59号(2025年4月1日発行)より編集/転載