化学だいすきクラブ

私と化学(前・日本化学会副会長・近藤輝幸)

この記事を書いた人: 近藤輝幸 こんどうてるゆき
前・日本化学会副会長および教育・普及部門長 [専門]生体イメージング,分子プローブ合成,有機金属化学
近藤輝幸氏

日本化学会副会長と教育・普及部門長,および化学教育ディビジョン主査を務めている京都大学の近藤輝幸です。本稿が少しでも多くの皆さんの将来の参考になればと願っています。私は中学生の時に「理科(後に化学)には「ナゼ?」が溢れている。」ことに気づきました。高校生になり「有機化学」に興味を持ち,理系クラスを選択しました。

京都大学工学部石油化学科に入学し,有機化学,物理化学などの講義と基礎実験が始まりました。2回生の時に,石油化学科の教授であった福井謙一博士が「フロンティア軌道理論」の業績で,アジア人初のノーベル化学賞を受賞され,同級生と大いに盛り上がりました。4回生で「有機金属化学」の研究室を希望したところ,直接,研究を指導戴いた辻 康之先生が,中学から大学,研究室まで全て私と同じである先輩と知り驚きました。辻先生の激励で,私は「大学の研究者・教育者になる。」という夢を貫くことができました。教授の渡部良久先生には,助手として採用戴き,1994年11月から1年間,米国 Scripps 研究所の Sharpless 先生の研究室に留学させて戴きました。帰国後の2001年に Sharpless 先生が「キラル触媒を用いる不斉酸化反応の開発」の業績で,ノーベル化学賞を受賞されたことをニュースで知り,当日の夜,お祝いのメールをお送りしました。超ご多忙の先生からすぐに返信があり大変嬉しかったです。

私は,助教授までルテニウム(Ru)錯体に特徴的な反応性と触媒活性に惹かれ,学生と日夜,研究に没頭しました。2006年,京都大学とキヤノンとの協働研究プロジェクトが科学技術振興調整費に採択され,私も参加することになりました。苦しい時もありましたが,化学者ならではの発想を大切にし,医工連携・産学協働研究を推進しました。10年間のプロジェクトが終了した後,物質エネルギー化学専攻(旧 石油化学科)に教授として戻りました。2019年に,当専攻出身の吉野 彰博士(旭化成名誉フェロー)が「リチウムイオン電池の開発」の業績でノーベル化学賞を受賞されました。新型コロナ禍に突入した時期であり,学生・院生を元気づけるため,吉野先生にご講演というご無理なお願いをしたにも拘わらず,ご快諾戴き感謝しかありません。

私が「化学の力」で様々な人と出会い,刺激を受けた経験が少しでも皆さんの参考になれば幸いです。「化学は楽しい」という初心を忘れず頑張れば,必ず道は拓けます。

写真
写真: 近畿大学附属和歌山高等学校の1,2年生が,京都大学桂キャンパスを訪問しました(2024年11月)。この後,各自が行う「有機化学」と「無機化学」の体験実験について,筆者が概要と実験室での注意について説明している様子です。

化学だいすきクラブニュースレター第60号(2025年7月1日発行)より編集/転載

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