化学だいすきクラブ

私と化学(量子科学技術研究開発機構 量子生命科学研究所 所長・馬場嘉信)

この記事を書いた人: 馬場嘉信 ばばよしのぶ
量子科学技術研究開発機構(QST)量子生命科学研究所 所長 名古屋大学量子化学イノベーション研究所 特任教授 2024年度日本化学会 副会長 2025年度日本化学会 筆頭副会長
馬場嘉信氏

私が化学(科学)に目覚めたのは,60年前の小学校1年生のときでした。夏休みに稲の成長を調べて気候との関係をグラフにしたところ,生まれ故郷の人吉市理科展で入選し,熊本県の理科展でポスター発表したそうです(写真1)。まだ6歳でしたので,稲の成長を調べたこととデパートでご褒美のお子様ランチを食べたことは覚えていますが,ポスター発表のことはおぼろげな記憶しか残っていません。

私が,小学校から中学校を過ごした頃は,科学技術が大きく発展した時代でした。小学校入学直前に,世界初の高速鉄道である東海道新幹線が生まれ,東京オリンピックでオリンピック初の海外へのテレビ衛星生放送が実現しました。小学校5年生のときに人類初の月面着陸と月からのテレビ生中継を見て驚いたり,6年生のときに大阪万博で月の石を見て興奮したりしたことをすごく覚えています。このような経験を通して,将来は科学者になりたいという夢をいだくようになりました。今なら,間違い無く「化学だいすきクラブ」に入っていました!

高校では,化学,物理,生物,地学など理科は全て好きでしたが,化学実験の面白さに触れて,だんだん将来は化学者になろうと思うようになり,九州大学理学部化学科に入学しました。大学院まで9年間にわたり分析化学を研究し,世界記録になるような研究成果がでて,私の先生である大橋教授の最終講義でこの成果を紹介していただいたことは今でも鮮明に記憶しています。

九州大学で理学博士になった後に,化学で生命の謎を解く研究に興味を持つようになりました。ちょうどその頃,ヒトの遺伝子を全て解読しようという生命の最先端研究分野であるヒト・ゲノム解析国際プロジェクトが開始され,私は化学から生命分野であるヒト・ゲノム研究に飛び込み,その後30年間にわたり世界中の仲間と化学と生命両方の研究をエンジョイしてきました。今では,遺伝子からがんを超早期診断する分析技術を開発した私の研究室の卒業生がベンチャーを起業し,尿がん検査マイシグナル®を販売,がんの超早期診断・予防を実現するなど,化学は健康長寿社会の実現に大きく貢献しています。

私は,60歳を過ぎた2019年から,今度は,物理の最先端研究分野である量子技術と生命と化学をあわせた研究にチャレンジし始めました。私たちはこれを『量子生命科学』と呼び,世界中の化学,生物,物理,医学,農学,薬学,情報など様々な分野の若い仲間と新しい研究にワクワクしながら取り組んでいます(写真2小中学生向け動画をご覧ください)。

小学校に入学してから既に60年が経ち,私は化学を楽しみつくし,さらに,生物,物理,医学,農学,薬学,情報などの色々な分野に首を突っ込んできました。皆さんも是非,大好きな化学にワクワクしながら心から楽しんで,化学をもとに他の分野にもチャレンジしてください。化学を一緒に楽しみましょう!

写真1
写真1: 小学校1年生のときの熊本県理科展でのポスター発表
写真2
写真2: 量子生命科学サマーセミナー2025小中学生向け動画(https://youtu.be/PPBCury7LD4)。

化学だいすきクラブニュースレター第61号(2025年12月1日発行)より編集/転載

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