化学だいすきクラブ

私が化学を選んだ理由(京都大学・辻 康之)

この記事を書いた人: 辻 康之 Tsuji Yasushi
2016年日本化学会筆頭副会長 京都大学大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 教授 専門:触媒有機化学
京都大学・辻 康之氏

化学はおもしろい!

みなさん,私はこれまで「化学」がずっとおもしろくって45年間勉強・研究してきました。今でも,おもしろくって,おもしろくって,毎日ワクワクしています。みなさんが中学生ならば,「化学」は「理科」で,また高校生以上のみなさんは「化学」という科目で勉強されていることと思います。このニュースレターを読んでいるみなさんですから,きっと毎日楽しく勉強していることでしょうね。

なぜ,私はこんなに化学をおもしろいと感じるのでしょうか? 自分でもハッキリとはわかりません。だって,多くのおもしろいことにあまりハッキリした理由はないでしょう? でも,少し考えてみると思い当たることがあります。それは小学生の時に購読していた学習研究社(当時)の「科学」という月刊誌の存在です。この雑誌は大変ユニークな雑誌で,付録fig1にフラスコ,ビーカー,試験管,試験管立てfig2,ろ紙,ロート,ロート台などが少しずつ付いてきたのです。それらを集めると簡単な化学実験室が自宅に出来ました。私が人生で最初に行った「化学実験」は,この「科学」の付録として付いてきた酸化マンガンを触媒に用いた過酸化水素水(オキシドール)からの酸素の発生です。酸素がシュワーっと出てきたときの感動は今でも忘れられません。

化学がおもしろい理由

私なりに化学がおもしろい理由を考えてみました。①化学は身近にある。例:上に述べたように酸素を自分で発生させることが出来る。ナイロンは「石炭と空気と水から作られた」(ナイロン発売時のキャッチコピー)。大気中に多量にある窒素分子を大規模に有用なアンモニアに変化させることが出来る。などなど。②化学には古くからの学問として膨大な蓄積があり(奥が深い),勉強のやりがいがある。③人工光合成,太陽光発電,燃料電池,新薬合成,地球環境保全,理論化学など今後の人類の発展に大きな貢献ができる分野がたくさんある。

こうして,私は志望の京都大学工学部石油化学科(現在の工業化学科)に入学し,化学の勉強を本格的に始めました。そこは武上善信先生,また日本で初めてノーベル化学賞を受賞された福井謙一先生など魅力的な先生がたくさんおられ,勉強すればするほど,ますます化学がおもしろくなってしまいました。みなさんも化学のおもしろさを楽しんでみませんか? 「化学はおもしろい!」さあ,ワクワク人生を始めましょう。

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fig1:付録
fig:2
fig2:試験管立て

化学だいすきクラブニュースレター第35号(2017年2月20日発行)より編集/転載

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