私が化学を選んだ理由(JSR株式会社・佐藤 穂積)
小学2年生の時に担任の先生のアドバイスで,毎月1回,日の出/日の入りを1年間観察。画用紙に小学校の屋上から見える景色の絵を描き,そこに日付と共に太陽の出る場所,沈む場所を記しました。規則的に日の出と日の入りの場所が移動していくことに興味を持ちました。「科学」へ興味を持った最初です。以降,小学校では理科の授業が好きでした。高学年になってジャガイモをすりおろして得たデンプンを用いてのヨウ素デンプン反応,リトマス試験紙を用いての酸・アルカリ検査と「変化」を実際に見るという事に楽しさを感じました。これが「化学」へ興味を持った始まりです。
中学では文化部は迷わずに理科部に。化学,生物、地学それぞれに専門の先生がおられて授業を受けました。2年の担任は化学の先生,厳しくもユーモアに溢れた先生でした。理科室には実験器具が多数あり,多くの実験を実際に行う機会に恵まれました。フラスコの中で色や粘度が変わったり,臭いやガスの発生等,物質の変化は魅力的でした。高校は理系で大学は応用化学を専攻。進学した昭和40年代後半はまさに日本の石油化学が大きく伸びていた時代で,化学系の研究者になりたいという漠然とした気持ちがありました。進学後に化学と一言に言っても,分析化学,電気化学,有機合成化学,無機化学,高分子化学,触媒化学と多岐にわたる事を知り,その中から高分子化学を専攻。原子の数は百余りと限られているのに対し,原子から構成される分子の数は星の数ほどあり,分子を数多く並べる高分子化学には無限の可能性があるように感じました。会社に入社して開発に携わった高分子化学製品は,皆さんが日頃使われているパソコン,スマートフォーンやTV等の家電製品,自動車,建築材料等々広く活用されています。
化学の魅力は自身で新たな物質を生み出すと共に物質の変化を直接観察できる点にあると思っています。分析機器の進歩も著しく,ナノメーターサイズの観察も可能です。化学の将来はまだまだチャレンジする事が無数にあります。皆さんが日々の生活の中で「物質」に興味を持ったり,その「変化」を面白いと感じたら,是非「化学」の扉を開いてみて下さい。皆さんの興味をもっと強く引く話が沢山でてくるはずです。
化学だいすきクラブニュースレター第32号(2016年2月20日発行)より編集/転載