化学だいすきクラブ

家庭でトライ!! DNAを取りだそう!

すべての生物は小さな細胞からできています。一つの細胞で生きている生物から,数百兆もの細胞が集まってできている生物までいます。この細胞の中には遺伝情報を伝えるDNAと呼ばれる物質が入っています。今回はDNAを,ブロッコリーから見える形にして取り出してみましょう。

*エタノールは引火しやすいので,火気に注意して実験しましょう。

この記事を書いた人: 田村定義
慶應義塾女子高等学校

準備するもの

準備するもの: すり鉢*1,すりこぎ,調理用のはさみ,計量カップ,計量スプーン,ガラス製コップ,割りばし,ガーゼ,輪ゴム,生のブロッコリー(新鮮なもの),食塩,食器用洗剤,無水エタノール*2
  • すり鉢*1
  • すりこぎ
  • 調理用のはさみ
  • 計量カップ
  • 計量スプーン
  • ガラス製コップ
  • 割りばし
  • ガーゼ
  • 輪ゴム
  • 生のブロッコリー(新鮮なもの)
  • 食塩
  • 食器用洗剤
  • 無水エタノール*2

*1 すり鉢はあらかじめ冷蔵庫で冷やしておく。

*2 無水エタノールは薬局で1,200円程度で買える。消毒用エタノールでもできるが,無水エタノールの方が良い。

実験操作1

実験操作1: DNA抽出液(DNAを溶かし出す溶液)を作る 小さじ2杯の食塩,小さじ2杯の洗剤を計量カップに入れ,水を加えて全体を200 mLにして,よく混ぜる。半透明の溶液になっても構わないが,あまり泡立てないようにする。この液がDNAの抽出液になる。

DNA抽出液(DNAを溶かし出す溶液)を作る

小さじ2杯の食塩,小さじ2杯の洗剤を計量カップに入れ,水を加えて全体を200 mLにして,よく混ぜる。半透明の溶液になっても構わないが,あまり泡立てないようにする。この液がDNAの抽出液になる。

実験操作2

実験操作2: ブロッコリーの花芽を切りとる 花芽の部分(表面の緑色の濃い部分)を,調理用のはさみで切り,大さじ4杯分になるくらいの量をとる。

ブロッコリーの花芽を切りとる

花芽の部分(表面の緑色の濃い部分)を,調理用のはさみで切り,大さじ4杯分になるくらいの量をとる。

実験操作3

実験操作3: 花芽をすりつぶす 最初は,すりこぎを押しつけるようにしてつぶし,その後すべての花芽を,手早くすりつぶす。 注意:時間がかかるとDNAが分解してしまうので手早く行う。

花芽をすりつぶす

最初は,すりこぎを押しつけるようにしてつぶし,その後すべての花芽を,手早くすりつぶす。

注意:時間がかかるとDNAが分解してしまうので手早く行う。

実験操作4

実験操作4: DNAを溶かし出す DNA抽出液を、すりつぶした花芽全部が浸る程度に加える。すりこぎで軽く混ぜた後,すり鉢を両手で持って回すようにして,全体にまんべんなく液が混ざるようにする。すり鉢の中の物は,そのまま5分間静かに置いておく。 注意:静かに混ぜないと,DNA鎖が切断されて取り出せなくなる。

DNAを溶かし出す

DNA抽出液を、すりつぶした花芽全部が浸る程度に加える。すりこぎで軽く混ぜた後,すり鉢を両手で持って回すようにして,全体にまんべんなく液が混ざるようにする。すり鉢の中の物は,そのまま5分間静かに置いておく。

注意:静かに混ぜないと,DNA鎖が切断されて取り出せなくなる。

実験操作5

実験操作5: ろ過する ガーゼをコップの上に置いて輪ゴムで止め,すり鉢の中の物を静かに移して,ろ過する。

ろ過する

ガーゼをコップの上に置いて輪ゴムで止め,すり鉢の中の物を静かに移して,ろ過する。

実験操作6

実験操作6: DNAを取り出す 割りばしを使い,エタノールをコップの壁に伝わせて静かに注ぎ,透明なエタノール層を抽出液の上に乗せるようにする。このとき透明なエタノール層の高さが抽出液の高さの3〜4倍程度になるようにする。数分すると,下の抽出液の層から上のエタノール層に、DNAが白い糸状になっで浮き上がってくる。

DNAを取り出す

割りばしを使い,エタノールをコップの壁に伝わせて静かに注ぎ,透明なエタノール層を抽出液の上に乗せるようにする。このとき透明なエタノール層の高さが抽出液の高さの3〜4倍程度になるようにする。数分すると,下の抽出液の層から上のエタノール層に、DNAが白い糸状になっで浮き上がってくる。

解説

DNA分子のモデル図

DNAは,生物の体を作るタンパク質の合成や,遺伝に関係する物質で,「デオキシリボ核酸」を表す英語(deoxyribonucleic acid)を略しDNAと書き表します。DNAは生物の細胞の核の中にあります。その分子は非常に細くて長いもので,太さ(細さ)は1 mmの50万分の一ほどですが,一つの細胞の中に入っているDNA分子をつなぎ合わせると、ヒトの場合は長さは約2 mにもなります。DNAを取リ出す実験には細胞の大きさに対して核が大きく細胞がたくさん集まっている方が適しています。ブロッコリーの食べる部分は,主に花のつぼみです。この部分は細胞分裂が盛んでまだ細胞が小さくDNAが取り出しやすいので,今回の実験に選びました。抽出液に含まれる洗剤は,脂質で構成されている細胞膜を壊して,DNAを溶かし出せるようにします。食塩は,DNAを溶かしやすくすると共に,材料に含まれるタンパク質を沈殿させるはたらきをします。この結果,DNAは抽出液に溶け込み細胞の膜を作っていた成分や細胞の中にあったタンパク質などは,ろ過で取り除かれます。抽出液に溶けているDNAはエタノールに溶けにくいので,エタノールを加えると糸状になって現れてきます。

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化学だいすきクラブニュースレター第26号(2014年2月20日発行)より編集/転載

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