化学だいすきクラブ

暮らしの化学 水を加えて加熱するから美味おいしくなる おもちやお米のデンプンの化学

暮らしの化学 水を加えて加熱するから美味しくなる お餅やお米のデンプンの化学

皆さんはお正月にお餅を食べるでしょうか。小学3年生の花子はモチモチの食感が大好きです。

「そんなお餅のモチモチにも化学があるんだ!」と中学1年生の兄のケンが教えてくれました。

話はさらに“お米”や非常食として食べられている“α米あるふぁまい ”へと広がっていきます。

この記事を書いた人: 池田亜希子(サイエンスライター)

どうしてお餅はモチモチでふくらむの?

花子お正月といえば,このモチモチのお餅! お兄ちゃん,お餅ってお米からできているんでしょ。普通のお米と違うのかしら?

ケン化学の目で見ると違いがわかるよ。花子は,お米の主な成分を知っているかな?

花子デンプンだって聞いたことがあるわ! ヨウ素液をかけると反応が起こって,紫色になるのよね。

ケン6年生で習う「ヨウ素デンプン反応」だね。この方法を使えば,「そこにデンプンがあるかどうか」がわかるんだ。お米はイネ(稲)の種なんだけれど(図1),いろいろな種類があって僕らがいつも食べているお米は「うるち米」で,お餅ができるのは「もち米」なんだ。ただ,どちらも主にデンプンからできている。デンプンというのは,アミロースとアミロペクチンが混ざってできているんだよ。

花子アミロースとアミロペクチン?! 「デンプンのり」の話をしてくれた時に出てきたわよね【本誌第59号(2025年4月1日発行)の「暮らしの化学」も,ぜひ読んでね!】。どちらもブドウ糖(グルコース)が長くつながったものだけれど,アミロースはまっすぐで,アミロペクチンはところどころ枝分かれしているんだったわね(図2)。

ケンよく覚えているね。お餅について考える時は,この2つの違いに注目するんだ。僕らがご飯としてよく食べている「うるち米」のデンプンではアミロースとアミロペクチンが混ざっているんだけれど,「もち米」のデンプンはほぼアミロペクチンだけからできているんだ。

花子ということは,アミロペクチンがモチモチ食感を生み出しているってことね!

ケンそう。お餅をつくる時は,蒸したもち米をうすきねを使ってつくよね。こうしてもち米をかき混ぜるとアミロペクチンの枝と枝がからみ合ってねばりが出てくる。その結果,モチモチでびるお餅になるんだ。

花子なるほど。お餅を焼くとプーッと膨らむのも関係しているかしら?

ケンそれはお餅が水分を含んでいるからだね。焼いて温められると,水分は水蒸気になって体積が増える。この水蒸気がお餅を膨らませるんだ。

花子モチモチの壁のせいで水蒸気が逃げられなくて膨れるってことね。お餅って本当に楽しい食べ物ね。

美味しく食べられるのは「α−デンプン」

花子お餅は時間がたつと硬くなって美味しくないわね。

ケンご飯も時間がたつと美味しくなくなるよね。それに炊いたり蒸したりする前の生米なまごめも硬くて美味しくない。

花子それって,いったん炊いたり蒸したりしたご飯が,生米に戻るってことなの?

ケンまったく同じものに戻るわけではないけれど,生米に近い状態に戻るんだ。まず,生米は「βべーた−デンプン」でできている。アミロースとアミロペクチンが結合していてきっちり並んでいるから,β−デンプンはとても硬くて簡単には水を吸わないんだ(図3)。ところが,水を加えて加熱すると,結合が切れて水が入っていくからふっくらと美味しくなる。この状態が「αあるふぁ−デンプン」だよ。ところが,お餅もご飯も,時間がたって冷えるとデンプンに含まれている水分が抜けて乾燥かんそうして,β−デンプンに戻ってしまうんだ。だから硬くなって美味しくなくなる。

花子そうだったのね。じゃあ,β−デンプンに戻らない方法を見つければいいわけね。

ケンこの前,お母さんが「非常食用に」って「α米」を買って来ていたのを覚えているかな?

花子水やお湯を加えれば美味しいご飯に戻るんだって。でも見た目は,ただの乾燥したご飯だったけれど…。

ケンその通りだ。α−デンプンの状態のまま乾燥させたから「α米」だね。水を加えれば,簡単に水を吸ってご飯に戻るんだ。

花子ちょっと待って,さっき,水が抜けて乾燥したらβ−デンプンに戻るって言ったじゃない。

ケンその乾燥のさせ方が重要なんだ。β−デンプンに戻るスキを与えないくらい,「素早すばやく冷凍させる」か,「高い温度を保ったまま乾燥させる」んだよ。そうするとα−デンプンの状態を保てるんだ。

花子デンプンに元に戻るスキを与えないってことができるのね。

ケンいろいろな技術があるから,調べてみるといい。実は,乾飯(かれいい/ほしいい)という乾燥させた米が古代から食べられていたんだ。歴史も面白いんだよ。

長期保存できるのは「β−デンプン」

花子スズメは生米を食べるわね。でも,炊いたお米はもっと美味しいんだって教えてあげたいわね。

ケンそう思うよね。でもね,僕らが生米を食べないのは硬いからというだけじゃなくて,ほとんど消化できないからなんだ。スズメは生米を好んで食べているから,そのままでも美味しいって思っているかもしれないよ(笑)。

ところで,たくさんある食べ物の中から,日本ではお米が主食になった。味が他の食べ物の味の邪魔じゃまをしないとか,日本で栽培さいばいしやすいとか,理由はいろいろあるけれど,「長期保存ちょうきほぞんできる」ってことがとても重要なんだ。

花子そういえば,お母さんが「今年はお米が足りないけれど,去年きょねん一昨年おととしのお米が特別にスーパーで売られたから助かった」って話していたわ。

ケンそうなんだ。保存技術がよくなったということはあるけれど,もともとお米は長持ちするんだ。こうして保存できるのはβ−デンプンが水を吸わないからだね。たくわえておけるから,僕らはいつでも安心してご飯が食べられる。

花子そんなお米を大切にしなくてはいけないわね。

図1
図1: ご飯ができるまで【水田の苗→イネ→米→ご飯】
図2
図2: アミロースとアミロペクチン。ブドウ糖がつながってできている。
図3
図3: デンプンの中のアミロースやアミロペクチンの変化(イメージ) 宝酒造「米の食感 ~でんぷんの糊化と老化~」の図を参考に作成。
【参考】
米と栄養:農林水産省:https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/okome_summary/03/health01.html
米の食感 ~でんぷんの糊化と老化~ | 宝酒造 業務用調味料:https://chomiryo.takarashuzo.co.jp/knowledge/detail/106/
【自由研究】アルファ化米をつくろう | Honda Kids(キッズ) | Honda公式サイト:https://www.honda.co.jp/kids/jiyuu-kenkyu/upper/17/page2/
髙野克己,谷口亜樹子『米の科学』(朝倉書店,2021年)
井上直人『おいしい穀物の科学』(講談社 ブルーバックス,2014年)
齋藤勝裕『料理の科学』(サイエンス・アイ新書,2017年)

※URLのリンク先はいずれも2026年4月現在

化学だいすきクラブニュースレター第61号(2025年12月1日発行)より編集/転載

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